本事業の目的
GENIAC-PRIZEでは、生成AIの社会実装を後押しします。
経済産業省とNEDOは2024年2月、国内における生成AI基盤モデルの開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC」を打ち出しました。 様々な支援活動の展開により一定の成果が創出されましたが、更なる競争力の確保のためには、開発と利活用を一体的に進めていくことが重要です。
「GENIAC-PRIZE」では、NEDO懸賞金活用型プログラム (NEDO Challenge)の制度を活用し、生成AIサービスによる解決が望まれるテーマにおける具体的なニーズに基づき、開発・実証した生成AIアプリケーションやその実証成果を応募いただき、成果に応じた懸賞金を授与します。
これにより、様々な地域や業種における企業等による生成AIサービスの開発と実導入を促進します。
成果概要 OUTLINE OF RESULTS
GENIAC-PRIZEは生成AIサービスによる解決が望まれるテーマにおける具体的なニーズに基づき、開発・検証した生成AIアプリケーションを広く募集し、審査を経て成果に応じた懸賞金を授与するプログラムである。
2025年度のGENIAC-PRIZEは、3領域4テーマで実施した。
社会課題領域では、労働人口減による影響に対し、生成AIによる経済インパクトが大きく期待できる2つのテーマで「AIエージェント」の研究開発と実証成果を広く募集した:Ⅰ. 製造業の暗黙知の形式知化、Ⅱ. カスタマーサポートの生産性向上
全国から前者58件、後者56件、計114件応募を頂き、全国にユースケースが広がる事例となった。
官公庁領域では、審査業務を構成する一連のタスクである「大量の情報が蓄積されたデータベース等から審査等に必要な情報を探索し、情報の分析を行い、その結果を通じて判断を行う業務」の効率化に資する生成AIを募集した。37件応募を頂き、結果として1-3位は不在となったものの、官公庁領域における生成AI活用の期待が大きく高まる結果となった。
安全性領域では、生成AIの安全性に関わるリスクを特定すると同時に、当該リスク低減を目的とする技術開発を広く募集した。幅広い分野から41件の応募を頂き、AIエージェント活用時のリスクや著作権保護等のテーマを中心に幅広い分野から提案が寄せられた。
領域 国産基盤モデル等を活用した社会課題解決AIエージェント開発
社会課題領域では「製造業の暗黙知形式知化」と「カスタマーサポートの生産性向上」の2つのテーマでAIエージェントを募集。
結果、全国各地から応募が集まり、様々な業種・業態で114件のユースケースが集まる結果となった。
Ⅰ. 製造業の暗黙知の形式知化
- 応募総数
- 58件
製造業の暗黙知形式知化テーマでは、”製造・施工”や”企画・設計”をはじめに製造業務プロセス全般で様々なユースケースが生まれた。
Fairy Devices株式会社
- 【提案タイトル】
- 熟練者の代わりに作業者を支援するAIエージェントの開発
- 【提案概要案】
- 世界的な空調需要の増加に対し、熟練工不足と技術継承が課題となっています。本提案では、3,000時間の作業動画から構築したVLM等の基盤モデルを活用し、ウェアラブルデバイス「THINKLET」を通じて作業をリアルタイムに解析するAIエージェントを開発します。現場でのPoCでは高い検知精度と親和性を確認しており、作業の抜け漏れを自動チェック・通知することで、現場の負荷軽減と品質向上を実現します。
株式会社Algomatic
- 【提案タイトル】
- Tig溶接技術を例にした熟練者・非熟練者の作業動画の”比較”アプローチによる暗黙知の形式知化
- 【提案概要案】
- ユーザーは熟練者と非熟練者の作業動画を撮影してアップロードするのみ。技術の特性に応じて(今回は機械化が難しいTig溶接の技術を題材に選択)、熟練者と非熟練者の作業における”違い”を、複数の解析モジュールを使用しながら、テキスト情報に限らない形式知化された暗黙知として抽出。さらに蓄積された暗黙知を活用しほか作業者の技術評価・フィードバックも可能。
- 【提案タイトル】
- LLMを活用した実験自動化
- 【提案概要案】
- 化学実験室の暗黙知を形式知化し、有機ナノ粒子のアプリケーション開発を加速。公開論文・知財や商談議事録からテーマ・用途仮説を立て、補助金公募も抽出。探索空間をシミュレーションで絞り、LLMが実験目的→手順書→ロボット実行プロトコルへ変換し、24時間無人で実験について計画→実行(ロボット活用)→評価→再計画を回し続ける。実験ログを学習資産化し、実験の再現性も高めていく。
- 地域賞受賞企業
-
地域賞 株式会社オージーエヌ
株式会社令和AI地域賞 株式会社黒野金属
NousLagus株式会社地域賞 株式会社寺島研磨工業
富士通株式会社地域賞 株式会社MotorAI地域賞 栗山縫製株式会社
Axelidea株式会社地域賞 ノリタケ株式会社地域賞 松本工業株式会社
株式会社デンソー九州地域賞 有限会社 中村海産
株式会社ENOSTECH地域賞 有限会社モメンタムファクトリー・Orii
株式会社LIGHTz地域賞 NanoFrontier株式会社 - 特別賞受賞企業
-
AIエージェント賞 ダイキン工業株式会社
Fairy Devices株式会社ユースケース波及賞 株式会社チトセロボティクスユーザー変革賞 川崎重工業株式会社
株式会社NTTデータ持続実装賞 株式会社MotorAI
審査員からのコメント
Ⅱ. カスタマーサポートの生産性向上
- 応募総数
- 56件
カスタマーサポートの生産性向上テーマでは、顧客対応・顧客対応者の支援・顧客対応の管理・分析・展開において、ユースケースが生まれた。
newmo株式会社
- 【提案タイトル】
- タクシー配車業務のAI音声対応
- 【提案概要案】
- 本提案では電話によるタクシー配車を担うAI配車エージェント「maido」を対象に、国産音声合成モデル(VoiceCore)を用いた音声体験品質の検証を行う。maidoは本番環境で稼働し、従来取りこぼしていた着信を100%受電、AIによる対応完結率も向上している。本検証では音声のみを切り替え、社内被験者によるブラインドテストを通じて、音声の自然さや受容性を評価し、国産AI音声モデルの実用性を検証する。
株式会社JDSC
- 【提案タイトル】
- 「船主支援のAI番頭。メールと社内文書を資産に変える!」(東洋船舶株式会社)
- 【提案概要案】
- 船主業務の属人化や知見継承不足の課題を解決するためLLMとRAGを活用したAI番頭を導入。メール等の非構造データから情報を横断的に検索・要約・集約しエージェント機能で情報収集から分析・判断まで自律的に実行。既存メールシステムと連携し抽出結果を自動共有することで誰もが書庫やDBの奥底に眠る知識を活用し信頼ある判断を迅速に実現。業務効率と意思決定の質を大幅に向上させ、属人化を排除し業務を標準化します。
株式会社シャルクス
- 【提案タイトル】
- がん相談エージェント「ランタン」:あなたは一人ではありません
- 【提案概要案】
- 夜道を彷徨うようながんを患う人に、足元を照らす治療とケアの選択肢を示すAIエージェント「ランタン」を開発しウェブ上で開示した。信頼性の向上に薬剤師の実証で薬品名ハルシネーションを減少させる。示された選択肢を現実にするためには、居住地から専門家と繋がる情報が必要となる。横浜市と連携して開発した377万市民のための地域版エージェント「よこはまランタン」の改善と利用推進を進め、自治体DXのモデルとする。
- 地域賞受賞企業
-
地域賞 学校法人アルコット学園地域賞 株式会社MITSUHIRO
大熊町・大熊インキュベーションセンター地域賞 株式会社OneAI
Fukuoka Growth Next地域賞 株式会社イワタ
株式会社Gns地域賞 株式会社会津ゼネラルホールディングス
株式会社 Aisometry地域賞 株式会社悠心
新潟県工業技術総合研究所地域賞 京なかGOZAN地域賞 国立大学法人九州大学大学院
株式会社ONIXION - 特別賞受賞企業
-
AIエージェント賞 アイフル株式会社
FunnelSphere合同会社ユースケース波及賞 日本航空株式会社
Gen-AX株式会社ユーザー変革賞 株式会社JTB
カラクリ株式会社持続実装賞 東急株式会社
株式会社Nextremer
審査員からのコメント
領域 官公庁等における審査業務等の効率化に資する生成AI開発
- 応募総数
- 37件
官公庁における審査業務等の効率化では、官公庁領域における審査業務の効率化に資する生成AIを広く募集し、37件のご応募が寄せられた。
審査結果についての補足説明
厳正な審査の結果、このたび、官公庁領域による第1位から第3位までの該当者はなし、という判断となった。
この結果は、懸賞広告に記載の審査基準のもと、審査員による慎重かつ厳正な審査の結果となっている。
- 【審査委員長 羽鳥様】
-
多くの事業者に応募いただき感謝申し上げる。
残念ながらいずれの事業者も足切りラインである390点を超えておらず、懸賞広告に則り1~3位の賞金は提供されないこととなった。
今回の懸賞広告においては、プロトタイプを様々な観点で審査を行っている。特に探索(先行技術調査)の部分の配点が非常に大きくなっており、この部分の点数が伸び悩んだことによりこのような結果となった。
このことは、特許審査における探索というプロセスが如何に難しいかを表しているものと考えている。
特に、特許審査官は、候補となる数多くの文献を広く・漏れなく探した上で、精緻な判断を行うことが求められている。
その感覚や水準が、事業者の皆様とは異なっていたことにより難易度が高まった可能性がある。
なお、今回の審査対象の出願の選定に当たっては、広い技術分野から、様々な難易度の問題を複数選定している。 - 【副審査委員長 大杉様】
-
今回の特許検索・審査の課題は昔から難しいとされている課題であり、現代でもその難しさは依然残ったまま、という結果となった。
ただし、審査部分に関しては、LLM(大規模言語モデル)の発展もあり、審査対象を書類1つに絞った上での単一性の評価等は、高い水準でAIで実現できる可能性が今回の懸賞広告でも十分に示されていた。
残る課題は検索部分である。技術的には「上位k件に正解が含まれる再現率を1.0に近づけるためのkの最小化」が重要となる。
この構造におそらく気がついた提案をされた事業者が点数が高くなる傾向が見られた。
kが大きな状態でも実用性を高めるために、例えば特許審査官が検索する前に、その申請情報を事前にバッチ処理等で大量に単一性の評価を行っておく、などの工夫がいくつか想定されるが、今回のプロトタイプではリアルタイム性が求められたため、このような追加提案はほとんど見られず、実用に向けては工夫の余地が大きいと考えている。
今回は難易度が高く1~3位の受賞者が出なかったことは短期的には残念であるが、裏を返せばまだまだ技術的に簡単に解けない課題が残っているということでもあり、今回ご応募いただいた事業者の皆様には、より一層のAI活用手法の研鑽と応用先の展開について推進いただければ幸いである。
なお、情報探索の性能に係る審査(1/2)を通過した上位10社の審査総合点(書面審査及びプロトタイプ審査の合計点)は以下の通りである。
※非掲載希望者を除く
| 応募企業名 | 総合点 |
|---|---|
| ITS株式会社 | 600 |
| 株式会社AIRI | 581 |
| ひふみ株式会社 | 456 |
| Patentfield株式会社 | 407 |
| AI inside株式会社 | 385 |
| 合同会社大人検索 | 366 |
| 株式会社ビズテック | 319 |
| 三菱総研DCS株式会社 | 296 |
| 合同会社L2F | 253 |
| (非公開希望) | 168 |
- 特別賞受賞企業
-
性能賞(有用な示唆の提示) 株式会社AIRI性能賞(有用な文献の提示) 株式会社AIRI社会波及賞 ITS株式会社技術新規賞 Patentfield株式会社
領域 生成AIの安全性確保に向けたリスク探索及びリスク低減技術の開発
- 応募総数
- 41件
安全性領域応募の提案概要はこちら
生成AIの安全性確保に向けたリスク探索及びリスク低減技術の開発では、生成AIの社会全体における利活用の促進に繋げるため、生成AIの安全性に関わるリスクの提示と、当該リスク低減を目的とする技術開発を募集した。
41件の応募を頂き、テーマとしてもハルシネーション・目的外利用・個人情報流出の防止など幅広い分野のものがあった。
本審査では、特定したリスク、対策技術の妥当性や性能評価、新規性・将来性、公共性を元に審査を実施。
また、技術開発に関してはアイデアのみの応募ではなく、実際にプロダクトを操作するデモ実演も行って頂いた。
- 【提案タイトル】
- 生成AIにおけるデータの真正性・正当性の保護基盤構築 ~ IPの音声等コンテンツ権利保護と消費者の安全性確保への貢献 ~
- 【提案概要案】
-
所有者が許諾したデータをVC(verified credentials)、ブロックチェーンで正規データとして定義し、判別できるようにする基盤。
無断学習や権利侵害を危惧するクリエイターのAI活用躊躇による産業停滞や、フェイク情報の氾濫による社会的混乱リスクに対応。
元データ、AIモデル、AIコンテンツを「データの家系図」として系譜を紐づけるもので、APIにより多様なユースケースに対応可能。
- 【提案タイトル】
- 日本語特化型AIガードレール「chakoshi」による包括的リスク低減と安全な社会実装
- 【提案概要案】
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生成AIでのテキスト入出力に関するリスクを検知する多層構成のガードレール技術。 機密情報流出に対しPIIフィルタモデル・ルールベースフィルタ、敵対的攻撃に対しプロンプトインジェクションモデル、有害コンテンツ生成・リスク変動性に対しコンテンツモデレーションモデル、誤情報に対し誤情報抑制機能を備える。
各機構の検知項目は利用者が自由に定義でき、 公開APIにより既存システムへの組み込みも容易。
- 【提案タイトル】
- AIエージェントにおける不正なツール実行リスクへの総合的な対策
- 【提案概要案】
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外部文書に仕込まれた指示によってAIが誤作動する間接プロンプトインジェクションと、導入後にツールが裏切るMCPラグプルという2つの脅威に対し、2層の対策技術により不正なツール実行リスクを低減。
①間接プロンプトインジェクションへの対策:ツール実行前にユーザーの意図とツール呼び出しを比較
②不正なMCPサーバへの対策:ツール実行時のふるまいを評価し許可ポリシーと比較
- 特別賞受賞企業
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みらいビジョン賞 IPconnect株式会社みらいビジョン賞 株式会社Layer8みらいビジョン賞 Another Star合同会社
審査員からのコメント